箱のかけ算と分解
今回扱う線形空間はごつごつした名前なので、
ただの「箱」と呼ぶことにします。
数にかけ算があるように箱もかけ算できます。
数はかならず1で割り切れます。
箱はかならず0をもっています。
数と数をかけると数になるように、
箱と箱をかけると箱になります。
2は1で割り切れる数で、3は1で割り切れる数です。
2×3=6も、1で割り切れる数になりますね。
x軸は0を含む「箱」W、y軸は0を含む「箱」W'と呼ぼう。
この積W×W'は、要素を(x,y)と並べてかける「箱」です。
この「箱W×W'」は原点(0,0)というOを含みます。
Wの基底がex,W'の基底がeyだとすると、
「箱V=W×W'」の基底(1,0),(0,1)としてそのまま使えます。
このV=W×W'は積なのですが、「直和」といい、W⊕W'とかくことが多いです。
それは、積の反対の視点で考えるとわかりやすいです。
6=2×3から、6は互いに素な(1しか公約数がない)2数2と3の積に分解できますね。
同じように
V=W×W'から、Vは互いに素な(0しか共通要素がない)2箱WとW'の積に分解できますね。
これを「直和分解」といいます。
VはWの成分とW’の成分を並べただけの形にかけます。
要素の個数のイメージでいくと、まさに直積ですが、
表示としては並べてくっつけたもの、カッコでまとめてくっつけた感じ
だから、ただの+ではなく⊕です。
それだけではありません。
写像も線形な空間を作るので、
写像(射)も「箱」と呼べます。
だから、
写像箱f:V→WでV=V1⊕V2、W=W1⊕W2と分解できるとき、
2つの写像箱f1;V1→W1,f2=V2→W2があれば、
写像箱f=f1⊕f2も直和分解できます。
さらに、写像は行列で表現できるため、
x1∊V1, x2∊V2,
y1∊W1, y2∊W2
とすると、
f1:V1→W1,
f2:V2→W2
に対して、
t[y1,y2]={{f1,0},{0,f2}}=t[x1,x2]
のように、
写像箱の直和分解は部分箱を対角成分にならべてかけます。
写像箱を分解して並べただけという感じがよく出ています。
もちろん、代数計算すれば条件通りです。
texでかくと、さらに見た目とコトバが一致します。
このイメージがあると、
「積分解というよりは和分解」
というイメージになるので、
「直和」分解というのはしっくりきますね。
ここからは、次元と直和をつなげてみよう。
<箱の次元公式と直和分解>
次元公式は、
dim(W1+W2)=dimW1+dimW2-dim(W1∩W2)
ですが、
W1とW2が0以外かぶらないと次元0になりますね。
だから、
dim(W1⊕W2)=dimW1+dimW2
たとえば、
R4の部分箱W1={(x1,x2,x3,x4); x1+x2=x3, x1-x2=x4}、
W2={(x1,x2,x3,x4); x3=x4=0}とすると、
基底はW1が(1,1,2,0),(1,-1,0,2)で、W2が(1,0,0,0),(0,1,0,0)とできるので、
dimW1=dimW2=2ですが、
W1の基底のx3,x4成分はゼロではありませんが、W2の基底では表せません。
また、W2の基底はx3=x4=0ですが、x1=x2=0でない限りは、x1+x2=x1-x2=0にはできません。
だから、基底の段階で、W1とW2は原点以外の共通点がないので直和の関係です。
dim(W1⊕W2)=dimW1+dimW2=2+2=4ですから、
R4=W1⊕W2と「直和分解できる」ということがわかりますね。
これを一般化すると部分箱Wj,Wiについて、
ΣWj=⊕Wjであることは、dim(ΣWj)=ΣdimWjと同じです。
また、Wjを除いた部分箱の総和ΣWiとの共通部分は{0}です。
<写像箱の次元公式と直和分解>
次元公式は、
dim V= dim Kerf + dim f(V)
です。
線形変換のfがf(W)がWの部分ならば、
部分空間Wを「f不変な部分空間」といいます。
RnからRnへの写像箱fで、
Rnのn個基底uiについてのfの表現Aが
A={{Ar×r,Or×(n-r)},{O(n-r)×r,A(n-r)×(n-r)}}
の形が持てることは、
Rnの適当なr次元のf不変部分箱W1と(n-r)次元のf不変部分箱W2があり、
Rn=W1⊕W2と「直和分解できる」ことと同値だね。
<geoebraでコード化>
a=Slider(1,10)
b=Slider(0.2,20)
X1=(10,0)
X2=(15,0)
x1=x(X1)
x2=x(X2)
f1(x)=a x
f2(x)=b x
y1=f1(x1)
y2=f2(x2)
Y1=(0,y1)
Y2=(0,y2)
P=(x1,y1)
Q=(x2,y2)
PolyLine(X1,P,Y1)
PolyLine(X2,Q,Y2)
M={{f1,0},{0,f2}}
text1=TableText(M)
text2="写像の直和分解M=("+text1+")"
♯これはLaTex数式をOnにします。
タイトルは「写像の直和分解」
<振り返り>
aをアニメーションにしてみましょう。
f1の写像にかかわる箱V1,W1は忙しく変化していますが、
f2の写像にかかわる箱V2,W2はじっとしたままで、無関係になってますね。
これで、直和分解が、互いに素な分解になっているということが、
見た目でもわかるでしょう。
「対角線の反対側にある 0のおかげで、
V1 と V2はお互いに全く干渉せず、
それぞれの世界で自由に伸縮できていますね。
では、もしこの行列の右上に 1 (非ゼロ成分) が入ってしまったらどうなるでしょうか?
M' = {{ f1 ,1} { 0 ,f2}}
そうです、f2の動きが f1 側に一方通行で『漏れ出して(干渉して)』しまいます。
完全に分裂(直和分解)できず、
この『1の漏れ出し』が残ってしまった状態……
これこそがJordan標準形です。
では、次回はJordan標準形を扱いましょう。