楕円曲線は浮き輪だったの?
このワークシートはMath by Codeの一部です。
1.楕円関数は格子にリンクした周期関数
楕円関数は格子模様にリンクした周期関数だ
<格子と浮き輪>
2つの周期を表す複素数w1、w2を基底とする整数m、n係数の
一次結合L={mw1+nw2}を格子latticeという。ぷつぷつの交差点の集まりだね。
比τ=w1/w2は上半平面とします。Im(τ)は正です。
Lは複素数の加法群の部分群で、商群T=C/Lはトーラス(浮き輪、ドーナッツ)です。
これについてはあとで、説明します。
<楕円関数>
除去できない孤立特異点がない関数、いわゆる有理型関数fでf(z+w)=f(z)
が格子Lの要素wについて成り立つときに、fを楕円関数を呼ぶこととし、
w1、w2の2つの周期があるので、2重周期だという。
Lについての楕円関数をあつめたものをE(L)としよう。
ここで、3の倍数で割った商群Z3=Z/3Z={0,1,2}を思い出そう。
各要素zでz+3がZ3に属して、Z3は加法と乗法で体になったことをイメージしよう。
楕円関数E(L)も加法と乗法で体になるでしょう。
数直線を3のサイズで区切ると、最初の{0,1,2}の繰り返しのように区切ることができたように、
複素平面を
T={xw1+yw2 for x in [0,1) for y in [0,1)}という基本領域、基本平行四辺形
に綺麗に裁断することができる。
周期分たせば、次々のとなりの領域にシフトするだけなので、
Tで関数f(z)を調べれば十分だと言えるね。
商群T=C/Lは浮き輪です。
平行四辺形の上辺をくるっとまいて下辺にくっつける。
できたチューブをぐにゃりとまげて、左端にできた輪と右端にできた輪を合わせてみよう。
3の倍数で割った商群が反復する基本単位だったように、
この浮き輪が反復する基本単位になることがわかるね。
だって、昔のテレビゲームみたいに、上端に進むと下端からでてきて、右端に進むと左端からでる。
だから、無限の広さが、テレビ画面に納まっているというしくみと同じだね。
つまり、格子Lで周期関数の楕円関数E(L)たちは、加減乗除のできる体で浮き輪C/Lだということだ。
<基本領域Tに極なしの楕円関数は定数だ>
f(z)が基本領域Tで極がなければ、
f(z)は、C全体でも極がなく、C全体で有界だ。
X={xw1+yw2 for x in [0,1] for y in [0,1]}で、
f(X)={f(z) for z in X}は有界であり、f(C)=f(X)。
リュ-ビルの定理「f(z)がC上で解析的で有界なら、f(z)は定数関数だ。」から、
f(z)は定数。
これの対偶から、「定数でない楕円関数は極を持つ。」ということになる。
基本領域Tが平和な爆発する地雷のない世界ならば、
全世界Cが平和になるということだね。
しかも、波風のたたない、一定の世界。
でも、これでは、平和すぎてつまらないかも。
2.ワイヤストラスのp関数
<楕円関数の極と零点>
f(z)が楕円関数で、基本領域Tの境界∂Tには零点も極もなく、z1からzmがTの極だとする。
留数定理から、C=∂Tにそって周回積分すると、留数の和=1/2π∫Cf(z)dzとなるね。
一方で、f(z)の周期性から基本領域TのCにおけるf(z)の値は対辺に同じ値がある。
その値について、積分は逆向きになるので、積分値が0になるペアが必ずある。
だから、周回積分値=0となる。だから、留数の総和=0と言えるね。
ということは、プラスの留数があってもマイナスの留数があり、相殺されて、ゼロになるということだ。
だから、1位の極が1個だけあるということは許されない。
1位の極しかないとしたら、偶数個あって、留数の±が消しあうはずだし、
もし極が1個だけならば、位数が2にして留数ゼロにしないといけない。
この相殺劇は続く。
「零点(ゼロ)」と「極(無限大)」の数にも起きる。
楕円関数f(z)が基本領域の境界Cで零点も極も持たず、
基本領域Tの零点の位数をmjとし、極の位数をnjとすると、
零点mjの総和と極njの総和は基本領域で等しい。(アーベルの定理)
<ワイヤストラスのp関数>
格子Lから原点{0}を取り除いた部分の点wについて
zの関数を定めてp(ドイツ語のぺー)関数という。
p関数は原点に2位の極があり、各格子にも2位の極を配置するという、
重装備の地雷を規則的に埋め込んだ関数だ。
p(z、L)=1/z^2+Σw(1/(z-w)^2-1/w^2)
Σの中の1/w^2は有理関数の部分分数展開で発散を防ぐときにつけたした項と同じ役割があるね。
このp関数が楕円関数(解析)と楕円曲線(代数)と浮き輪(幾何)をつなぐキーマンだ。
代数的数論から解析的数論へとシフトする鍵になるVIPだ。
地雷が無限にならぶ物騒な風景に見えるかもしれません。
でも、位数2の極は留数が0なので、留数の総和=0をちゃんと守っている。
攻撃的ではない、守りの世界、それがワイヤストラスのp関数なのです。
うーん、いかにもドイツ人のち密で堅牢で、しかも平和的な構えなんでしょう。
これから詳しく見ていこう。
<楕円関数から楕円曲線へ>
2つのw1、w2から決まる格子Lの点集合wを使ったp関数を詳しく調べよう。
(p(z、L)とか、p(z、w1、w2)、p(z、w1/w2)と書いたりする。)
p(z)=1/z^2+Σw(1/(z-w)^2-1/w^2)
ワイヤストラスのp関数p(z)のzにーzを代入してみよう。
第1項1/(-z)^2=1/z^2,Σの前半1/(-z-w)^2=1/(z+w)^2
ここで、格子 Lという「ぷつぷつ」の集合を思い浮かべてほしい。
格子は原点(ゼロ)を中心に完璧な点対称に並んでいるから、
すべての w を一斉に -w にひっくり返しても、全体集合としてのぷつぷつの配置は全く変わらないんだ。
だから、p(-z)=p(z)なので、pは偶関数となるね。
pは偶関数なのでz=0でのローラン展開は奇数次の項が消えてすっきり。
p(z)=z^(-2) +a_0+a_2z^2+a_4z^4.....としよう。
p(z)の正則部分f(z)=Σw(1/(z-w)^2-1/w^2)のテイラー展開から、
a_0=f(0)=0, a_2=f''(0)/2!=3Σ1/w^4, a_4=f(4)(0)/4!=5Σ1/w^6
zで微分すると、
p'(z)=-2z^(-3)+2a_2z+4a_4z^3+...
主要部(次数が負で爆発する部分)を消すために指数をそろえる。
p(z)^3=z^(-6) +3a_2z^(-2) +3a_4+...
p'(z)^2=4z^(-6) -8a_2z^(-2) -16a_4+...
p'(z)^2-4p(z)^3=-20a_2z^(-2) -28a_4+....
両辺に20a_2p(z)をたしてあげることで、右辺の爆発部分が消せるね。
p'(z)^2ー4p(z)^3+20a_2p(z)= -28a_4+....は
左辺は楕円関数どうしの和差積だから、楕円関数が体だから、
計算結果も楕円関数となる。
もとは格子点Lでの2重周期のpから出発したのだから、周期は同じで格子点以外は正則だ。
基本領域に極がないなら定数になることを思い出そう。
右辺は定数のみとなる。
これから、
p'(z)^2=4p(z)^3ーg2p(z) -g3
として、
g2=20 *3Σ1/w^4=60Σw^(-4),
g3=28*5Σ1/w^6=140Σw^(-6)
W=p(z)とおくと、
(dW/dz)^2=4W^3-g2W-g3
この3次式は3つの異なる零点を持つ。
ω1=w1/2, ω3=w2/2,ω2=(w1+w2)/2とおくと、
この3点は浮き輪の上下の継ぎ目、チューブの継ぎ目、対角線それぞれのど真ん中だ。
ω1,-ω2,ω3はp(z,L)の基本領域Tに含まれる。この3点をwqと代表しよう。
P'(z)=-2Σ1/(z-w)^3は奇関数だから、p'(wq)=-p'(wq)。
wqはpの周期の半分で、p'の周期でもあるから、p'(wq)=p'(-wq)となる。
この2行から、p'(wq)=0となるしかない。
p'の位数が3で、ω1,ω2,ω3はp'(z)の零点ということだね。
ここで、p=X,p'=Yとおいてみよう。
Y2=4X3-g2X-g3。
これはいわゆる楕円曲線(y2乗=xの3次式)で、2次元平面にかける。
4X3-g2X-g3=0という3次方程式の解が浮き輪では基本領域、つまり、浮き輪では
2つの継ぎ目と対角線のど真ん中の3点にあるということだ。
代数と図形ががっちりつながった。
その架け橋が「楕円関数が体であること」だった。
音程と音響がつながったのは、
音が数でできていて計算可能だとするピタゴラス教団・楽団の魂だったのと同じ気がするね。
課題:ワイヤストラスのp関数のイメージ作りをgeogebraでやろう。
たとえば、
text1="℘ (z) := \frac{1}{z^{2}}+\sum_{w∈Lnot{0}} ^{∞} \left [ \frac{1}{(z -w)^{2}}-\frac{1}{w^{2}} \right ]"
mn=Sequence(k,k,-10,10)
L=Flatten(Zip(Zip(m w1+n w2,m,mn),n,mn))
w1=2+6 i
w2=6+2i
w3=w1+w2
ω1=w1/2
ω2=w3/2
ω3=w2/2
O=0 i
ws ={O,w2,w3,w1}
q1 = polygon(ws)
これで、基本領域、格子点Lのぷつぷつ、p関数の式、
P’=0になる3点が目で見えるね。
ただし、pもp’も複素関数なので、図形として見ることはできません。
残念。
しかし、
奥の手があります。
複素数の点z=x+yiを実数の点(x,y)のように置き換えてしまうと、
pの火山のおよその形が表示できます。
一番形が派手な主要部だけの式を作ってみよう。
g(x, y) = 1 / (x^2 + y^2) + 1 / ((x - 2)^2 + (y - 6)^2)
これで、pがOとw1で爆発する火山になります。
P(x, y) = 1/(x^2+y^2) + 1/((x-2)^2+(y-6)^2) + 1/((x-6)^2+(y-2)^2) + 1/((x-8)^2+(y-8)^2)
これで、基本領域の4つの格子点に火山の火口ができて、
中間点で傾きがゼロになること、つまり、p'の零点になることがわかるね。