楕円曲線を探るために、キーワード足場をつくろう
このワークシートはMath by Codeの一部です。
前回の最後に土台を固めました。
しかし、それは湧き上がるかもしれないことへのあとずけのフォローでした。
今回は数学の総力戦に進む段階での基本、
つまり、各分野の基本ではないけれど、応用に進むときには「足場になる事柄」を確認しておこう。
1.幾何・位相のキーワード
幾何・位相のキーワード
<位相空間>
ユークリッド空間、距離空間では、始まりは「距離の定義」です。
距離を定義し、定義した距離で近傍を定義して、それから開区間の一般化としての開集合を定義してました。
ユークリッド空間、距離空間では、
その部分集合、つまり図形は、
全体と空と和と積が入る開集合色、
全体から開集合を引いた差の閉集合色、
どっちの色でもある全体と空。どっちでもない残り。
きれいに4色の図形に分かれていましたね。
しかし、位相空間では定義する順番が逆になります。
くわしくはこちら、https://www.geogebra.org/m/twxxx3yq#material/ndgvexhf
開集合の特徴「Xと空集合がメンバーで、和集合も積集合もメンバーだ」で「開集合を定義」します。
そこから、全体集合Xの中の部分集合たち、つまり、図形たちのうち、開集合の定義に入るもの、開集合族を位相Oとするのです。
位相の決まった空間を位相空間(X,O)と呼びました。
最後に近傍を定義しますが、距離は定義しません。
位相空間(X,O)で図形Yが点pの近傍となるのは、Yの内側にOの要素で{p}を覆うAをとれるときです。
さらに、Yが開集合なら開近傍といいます。近傍というのはお隣さんのイメージですね。
極端な2つの位相を見ておきましょう。
たとえば、O={X,空集合}なら、べったり位相(密着位相)です。
空間を切ったり、図形を覆ったりする部品がありません。どの点も線分も、全体という1個で覆うしかないので、みなコンパクト、みな同じ近傍Rを持ちます。
みんなお隣さんという感じ。ギュギュっとつまっている。
たとえば、O={2^X}はサラサラ位相(離散位相)
すべての部分集合を開集合、1点も開集合。だからどの点pもp自身{p}で覆える。1つ1つの点がそれ自身を近傍にできるから近傍を共有しないことが可能となります。
みんなポツンと一軒家という感じでしょうか。
<n次元多様体>
多様体というのは図形のことですが、図ありきの図形でありません。
n次元多様体はn次元ユークリッド空間のある点の近傍と同相になるユークリッド空間の中の点集合です。
独立なn個のパラメータの成分でかける点集合なので、
図形としてイメージできるとか、図がかけるという意味はないし、
図形なのに、点・辺・面という特徴量は、最初は持ちません。
たとえば、2次元球面S2は、3次元空間の中の球の表面です。
表面は2次元ですが、球体は3次元にあります。
<種数g=0,1,2,...>
閉曲面を位相同型で分類したときに
球面と同相なものを種数0、
トーラスと同相なものを種数1といます。
トーラスは球面に取っ手を1つつけたために穴が1つあいたとイメージすることができると、
種数は穴の数とか取っ手の数と同じことになります。
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これまで扱ってきた「楕円曲線」は、
複素平面に広げるとまさにこの種数1(トーラス)になる図形なのです。
<アフィンVS射影>
アフィン幾何は射影幾何との対比で使われる用語です。
アフィン幾何だけだと、スクリーンにななめから光線を当てると
本来移したい図形の長さ、角度がゆがんでしまうけど、平行と交点数は保たれるというよい性質がある。
直線は直線のままで、平行線は交わらない。このユークリッド空間の特徴を
射影幾何と対比して語るときに使われます。
射影幾何では、リーマン球面のように、無限遠点が無限遠点O∞の1点となります。
アフィン空間の曲線Eを射影空間に移した曲線Dにしましょう。
E:y^2=x^3-xのとき、
x=X/Z,y=Y/Zとして代入して、
両辺にZ^3をかけると、
Dは同次3次式
Y^2 Z=X^3-XZ^2となります。
曲線Eの点(a,b)は曲線Dの点(a,b,1)に対応します。
Dの座標点(X,Y,Z)=(0,1,0)は式を満足させますが、
EではZ→0のあり得ない点(0/0,1/0)=(∞,∞)となりますね。
EにはないがEのへりの点無限遠点O∞を表すことがわかります。
この点はDでは他の点と対等な1点として空間に閉じ込められていますよね。
くわしくはこちらhttps://www.geogebra.org/m/twxxx3yq#material/npnfscat
2、代数・群論のキーワード
代数・群論のキーワード
<アーベル拡大>
「ガロア拡大」には同値な言い換えがありましたね。
・代数拡大L/Kで自己同型群G=Aut(L/K)で不変な体L^G=Kとなる。
・任意のx∈Lについて、xのK上の共役は、どれもLに属している。(正規拡大)
・体LはK上の多項式f(x)∈K[x]の最小分解体だ。
そして、方程式論では、
このガロア拡大を連続的に行うことに対応して、ガロア群が正規部分群に畳まれるガロア対応が連鎖して恒等写像にいきつく。
このように体と群の2つの領域で、体は拡大し群は縮小するというきれいな対応が連続できるときに方程式が解けるというのが、
ガロアの方程式論(ガロアの基本定理)だったね。
この美しいガロア拡大に条件をつけたものにアーベル拡大があります。
「アーベル拡大」という体の拡大は、ガロア群がアーベル群になるもののことです。
方程式の解となるものたちのあつまりLがKの拡大で、
解をコップLの中でかき混ぜるガロア群がどっち先にまぜても同じなるものですね。
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<素イデアル>
環というのは、体から積の逆元の存在をぬいたものだった。環の代表は整数があるが、集合の外の要素をエクステして整数環が作れたね。
整数に倍数、素数、約数などの大切な用語があったように、その抽象化としての環Rにも同様な用語があるので、それを確認しよう。
環Rの要素aの倍数の集合、イデアル(a)を決めると、素イデアルPというものができる。
Rの2要素a,bの積abがPにあるなら、a,bの1つはPに入る。
Rの例として整数Zをとろう。
イデアル(1)=Z,(2)は2の倍数、(6)は6の倍数。(2)は素イデアルだが、(6)は素イデアルではないですね。
(2)に入らない2数の積で2の倍数を作ることはできないし、4×9=36は(6)に属するけれども、4も9も(6)にはないからだ。
素イデアルに似ているものが極大イデアルMだ。
Mを部分集合にするイデアルAが存在するならAはMかRのどちらかにあるものだ。
言い換えるとR=(1)、A=(a),M=(m)としてみるとよい。aが1以上m以下ならば、a=1かa=mしかない。このようにイデアルの生成元言い換えると、素数が1かその数自身しか約数がないという素数の定義と同じだね。
「素イデアル」が積による素数の定義で、
「極大イデアル」が商による素数の定義になっているように見えるね。
また、大切なことは次の通り。
極大イデアルは素イデアルである。
Pが素イデアルであることは、R/Pが整域であることと同値。
Mが極大イデアルであることは、R/Mが体であることと同値。
<ユークリッド整域>
2数の積が0ならば0が含まれるというのが整域だったが、
さらに整除の原理がなりたつものをユークリッドの整域(ED)といった。
要素にノルムをうまく定義すれば、割り算して商と余りが出せるということだね。
ガウス整数環Z[i]で、ノルムをN(x)=|x|とすれば、
ガウス整数でも商と余りの計算ができる(★)だから、
ので、ユークリッドの互除法ができることになるね。
さらに、約元を決めることもでき、すだれ算ができるはずだから、素因数分解(素イデアル分解)もできるでしょう。
環Rで1の約元つまり、単数は±1だけとはかぎらない。Z[i]の単数には±iもあるので注意しよう。
これが一意的にできると(UFD)という。
くわしくは、こちら、https://www.geogebra.org/m/twxxx3yq#material/w3ujrp2m
★下につけた、アプレット「ガウス整数の整除とガウス平面」を使って、ガウス整数の割り算をして、
商と余りがきまることを実感しよう。
<類体論>
類体論といえば、Qにx^2+1の根を添付するアーベル拡大Q(i)の部分Z[i]はガウス整数で、前にもかいたようにガウス整数の素元が複素数になることもあれば、整数そのままになることもある
というトピックは有名ですね。
他にも面白い定理があります。
「クロネッカー・ウェーバーの定理」です。
有理数体Q上の多項式P(x)の根で作るQのガロア拡大がもしアーベル拡大なら、P(x)の根はすべて1のべき根を使ってかける。平たくいうとQ(√m)がQ(ζn)に含まれるといことです。
たとえば、
√2=ζ8+ζ8-1,
√3=(ω-ω^2)i^(-1)
√5=ζ5-(ζ5)^2-(ζ5)^3+(ζ5)^4です。
qが2以外の素数の場合は、(-1)^(q-1)/2 qの平方根は、
Σχ_q(n)(ζq)^n ( for n in range(q))
ただし、χ_q(n)は、n≡m^2(mod q)となる整数mがあると1、ないとー1とします。
という一般化ができるようです。
要するに、sqrt((-1)^(q-1)/2 q)はζqを使ってかけるということですね。
<フロベニウス変換>
これに関連して、
有理数体Qのアーベル拡大Q(ζn)/Qのフロベニウス変換φpは
nを割り切らない素数pで、ζn→(ζn)^p
のp乗変換があります。
クロネッカー・ウェーバーの定理から、アーベル拡大K/Qは必ずQ[ζn]に含まれます。
だから、Gal(K/Q)でのφpはGal(Q(ζn)/Q)でのφpの制限になるのです。
ということは、sqrt((-1)^(q-1)/2 q)はζqを使ってかけるのだから、
素数pはアーベル拡大Q(sqrt((-1)^(q-1)/2 q))を使って分解できそうですね。
そうすると、素数pを素イデアル分解するという理想的な状態ができるかもしれません。