楕円曲線と群は仲がいい: 有理点群の位数としくみ
このワークシートはMath by Codeの一部です。
楕円曲線と群はとっても仲がよいのです。
今回はその第2弾
楕円曲線の有理点群のサイズ
そう、群の位数というやつです。
1.群の位数はけっこう重要
群の位数はけっこう重要です。
なぜかというと、群というのは中身の部品そのものよりも、そのつながり方が大事だからです。
群のメンバーの個数の情報から、どんな群なのかが推理できてしまうからです。
とくに位数の約数が大事です。
約数が大事なことは、整数、自然数と同じですね。
1は約数が1個しかない数、
素数は約数が2個ちょうどの数、
合成数は約数が3個以上ある数、
自然数はこの3種類に分類できましたね。
たとえば、自然数Nの約数が4個という情報からNはどんな数か推理できてしまいます。
約数が1,2,4,8の4個の数、つまり8=2の3乗のように素数の3乗数という整数かもしれません。
あと、
約数が1,2,5,10の4個の数、つまり10=2×5のように2種の素数の積というタイプもあるね。
<位数の倍数と約数>
このことは群でもそうでした、
たとえば、前回みた3で割った余りによる分類でできた群はZ/nZの仲間でした。
これをZnと書きましょう。n=3は素数です。
2と3の積が6であるように、群と群にも積があります。
群Z2={0,1}と群Z3={0,1,2}の直積Z2×Z3=Z23とすると、
この集合は位数が2×3=6の巡回群になりZ6と同型(ぴったり同じ仕組み)になります。
いつでも巡回群(加群だとしたら、時計の針のようにものになる要素(生成元)を位数だけたすとすべての要素を作れてもとに戻る群)になるかというとそうではなく、条件がありました。
直積Zm×Znが巡回群になるのはmとnが互いに素であるときにかぎる。(中国剰余定理)です。
2と2は互いに素でないので、たとえば、Z2×Z2は巡回群Z4ではなくクライン群と同型になります。
くるくる4回進むと戻るタイプではなく、2回で戻る群と裏表のある群の合成になるということです。
「ラグランジュの定理」というのがあったね。群Gを部分群Hで剰余類に分けると、G=|H|+a|H|+b|H|+....と剰余類分解ができることから、部分群Hの位数は群Gの約数である。直積がかけ算としたら、ラグランジュは群のサイズをわり算にしたものだったね。これを、1つレベルをさげて、要素の位数と群の位数をつないだものが「コーシーの定理」だった。pが有限群Gの位数の素因数ならGに位数pの元がある。
位数4の群では巡回群Z4={0,1,2,3}の2は位数が2だ。クライン群Z2×Z2{(0,0),(1,0),(0,1),(1,1)}の単位元以外はみな位数が2だったね。
この視点を掘り下げたアーベルは「有限アーベル群の構造定理」を見つけたのだったね。
可換群なら位数が素数のべきの巡回群の直積群と同型になる。
この巡回群の種類と個数は、同型の取り方と関係なく一定で、有限アーベル群の不変量というものだったね。これらのくわしい説明と事例はこちらhttps://www.geogebra.org/m/twxxx3yq#material/npumdkgyを見てください。
今は、位数を分解して考えることが大事ということまで、感じてもらえばいいです。
このイメージを持ったまま、
「楕円関数の有理点群の位数がどうなるのか」
というテーマに進みましょう。
2.有理点群の位数が有限の場合
<E:y^2=x^3+1>
前回主にあつかった曲線Eから始めましょう。
前回作ったアプレットを「楕円関数」という名前で検索して、1番目のものを取り入れて
次のようになっているように調整します。
LineやVectorは必要なときだけ使うことにしますから、
今回は削除します。
E: y^2=x^3 +1
P=(-1,0)
Q=(0,1)
R=(2,3)
S=(2,-3)
T=(0,-1)
O=(-2,4) # (-20000000000, 40000000000)とかのつもりですが、画面に収めるてめに小さくしてます。
今のところ、有理点は6点{O,P,Q,R,S,T}でした。
これらのつながりを群表を作って確認したい。
まず、
逆元の定義から上下対称点の和=Oです。
O+O=O,P+P=O,Q+T=O,R+S=O(4式)
ゼロ元の和は何もしないから、
P+O=P,Q+O=Q,R+O=R.S+O=S,T+O=T(5式)
次は逆元以外の異なる和を求めます。
隣接2点の和、P+Q=S、P+T=R、Q+R=P、S+T=P(4式)
1つとばしの和、
P+R=T,P+S=Q(2式)
これで、ことなる式は4+5+4+2=15本できましたが、6点で閉じてます。
6要素から2個選ぶ順列は6P2=6×5/2=15だから、すべてこの中でパスが回っているから、
可換群になっているね。
「楕円関数の有理点群の位数が6」
というタイトルをつけておこう。
<振り返り>
ここで、さっき確認した知識とつないでみよう。
位数は6= 2 × 3 であり、2と3は「互いに素」です。
ということは、中国剰余定理から、
この群は時計の針のように1つの元を足し続けるだけで全員を作ることができる、「巡回群 Z6」とぴったり同じ仕組み(同型) であることが推理できますね。
玉が空Oから降ってきました。
それを必ずRがキックしてだれかにパスしていきます。
1R = R
2R = R + R = T
3R = T + R = P
4R = P + R = Q
5R = Q + R = S
6R = S + R = 0 (元に戻る!)
実際、たとえば R にきた玉をだれに回すかを考えると、
Rだけを何回もたしているの同じになります。
これがZ6と同型、ピッタになることの意味ですね。
6人全員を巡回しながら、最後に高ーく空に舞い上がり、ゼロに戻ってきます。
Oを指していた時計の針を1回でRだけ回すと、針はR,T,P,Q,S,Oをさしてもとに戻る
モジュール算、巡回群と同じですね。
有理点群の位数が6
<E:y^2=x^3-x>
この曲線は、結合法則を説明するために前回最後に扱いました。
理由はx軸と3点で交わるので、直線との交点を作りやすいからでした。
しかし、そのときは有理点かどうかは気にしませんでしたね。
もういちど、観察してみよう。
E:y^2=x^3-x
P=(-1,0)
Q=(0,0)
R=(1,0)
O=(4,4) #(4000000,4000000)とかの巨大な座標のつもりで、画面に収めた無限遠点。
さっき、さりげなく、上下対称の点では和がゼロというグループにx軸上の点を入れてありました。
そうなんです。
x軸について線対称な2点(x,y),(x,-y)のyがゼロになった極限でも、和はゼロです。
言い換えると、y軸に平行な接線が引ける点は自分自身が逆元でもある点です。
だから、
P+P=O
Q+Q=O
R+R=O
もちろん、O+O=O(これで4本のパス)
2回回してOになるという意味では位数が2と言えますね。
これだとO,P,Q,Rが自己完結してOに戻してますよね。
他にパスをまわすとどうなるのでしょう。
PQを通る線はRと交わり、Rの対称点はRだから、
P+Q=R
同様にして、P+R=Q,Q+R=P
ですね。(これで3本)
O+P=P,O+Q=Q,O+R=R(これで3本)
4+(3+3)×2=16=4×4=16だから、
パスに順番もつけて、自分自身に回してからキックするのもありだから、16通り網羅しています。
ここで、さっき確認した知識とつないでみよう。
位数4= 2 × 2 であり、2と2は「互いに素」ではありません。
だから、Z4の巡回群にはなりませんね。だから、位数4であるクライン群と同型です。
クラインの4元群V4は至る所に出てくる。
x軸対称移動、y軸対称移動、原点対称移動、無移動の4つ変換群もクライン群だったね。
G={e,a,b,c}とすると、a^2=e,b^2=e,c^2=e となる。ab=c。生成元がa,bの2つ必要になるね。
P+P=O,Q+Q=O,P+Q=Rだから、PとQを生成元とできるということだ。
つまり、Pだけで作った群{O,P}をそのまま放置OかQを足すかすることで、
{O,P,Q,P+Q}の4要素を直積で作ることがでできるといことだね。
Z2×Z2の構造だと言える。
<振り返り>
有理点群がクライン群になった理由を振り返ると、
楕円曲線Eがx軸と3点で交わり、そのx座標が有理数だったことから始まった。
ということは、これを一般化しよう。
E:y^2=(x-a)(x-b)(x-c)で、a,b,cが有理数
曲線Eの有理点は無限遠点O,(a,0),(b,0),(c,0)の4点であり、4点はクライン群になるね。
有理点群の位数は4
さて、だいぶ楕円曲線の乗っかる有理点群の位数決めになれてきたところで、
新種に挑戦しよう。
今までの位数は4と6の偶数でした。
奇数の位数、つまり、{O,P,Q}の3点という世界を味わいたい。
<E:y^2=x^3-432>
Eはgeogebraではゆるやかな弓型になっていて、1実数で交わっている。
ここで、双有理変換というのをEにかけてみる。
x=12/(X+Y), y=36(X-Y)/(X+Y)
という数式をEに代入して整理する
すると、
F:X^3+Y^3=1
という美しい式ができる。
ねんのために、逆変換の式を作っておくと、
X=6/x+y/6x, Y=6/x-y/6x
となる。
これはほぼ、X+Y=0と同じように見えるけれども、原点を微妙にさけて進むという
面白い直線的な曲線だ。
ここで、変換式と逆変換式の分母の情報に着目して。X+Y≠0,x≠0
EとFはこの条件で同型となるね。
フェルマーの定理から、Fの有理点は無限遠点以外で2点(1,0),(0,1)だけだから、
Eの有理点は無限遠点O以外では
P(12/(1+0),36 (1-0)/(1+0))=(12,36)とQ(12/(0+1), 36 (0-1).(0+1))=(12,-36)のみ
つまり、Eの有理点群のメンバーは{O,P,Q}の3個となるね。
位数3といえば、剰余群Z3、巡回群C3と同型だ。
剰余系{0,1,2}で0+0=0,1+2=0,1+0=1,2+0=2,1+1=2,2+2=1となることと同様の式が成り立つはずだ。
空Oから玉が降ってきました。
1P:P=P
2P:P+P=Q
3P:Q+P=O(空に戻りました。)
Pを生成元とすると、玉はP,Q,Oの順にすべてわたりますね。
異なる点の和はP+Q=O、P+O=P、Q+O=Q
同じ点の和はP+P=Q、Q+Q=P
要するに円周の3等分の0,1,2の時計をPの針が1ずつ進むのと同じになるはずだから
こうなるのですね。
いちど、群の構造に持ち込むと、いちいち直線を伸ばして作図したり、有理点の座標を計算しなくても、
有理点がグループになっていることがすっきりとわかりますね。
有理点群の位数は3
3.有理点群の位数の謎にせまる
もう1つ挑戦しましょう。
<それは位数がn>
E:y^2=x^3-x+1
P=(1,1)
Q=(-1,1) #2P
R=(0,-1) #3P
S=(3,-5) #4P
T=(5,11) #5P
U=(1/4,7/8) #6P
Pの接線(傾き1)と曲線Eの交点の対称点がQだから、Q=P+P=2Pになります。
PQと曲線Eの交点の対称点がRだから、R=2P+P=3Pになります。
PRと曲線Eの交点の対称点がSだから、S=4Pになります。
PSと曲線Eの交点の対称点がTだから、T=5Pとなります。
図が複雑になりすぎるので、ここまでにしておきます。
でも、
PTと曲線Eの交点の対称点がUになりそうなことは図から見えてきますね。
……
点NがnPとします。
直線PnPと曲線Eの交点の対称点は(n+1)Pとなり、これまでのn個とは異なりそうですね。
そうです。
nの上限はなのです。
つまり、この群の位数は可算無限になるのです。
この曲線だけ特別なのでしょうか。
いいえ。
y^2=x^3-4
y^2=x^3-2
なども無限個あるようです。
位数が無限になるのか有限なのかは一般にはわかません。
「Mordell の定理」
アーベル群の基本定理から、
「有限生成アーベル群」は
「アーベル群Zのr個の直和」と「有限生成アーベル群」の直和と同型になる。
ここで、rは楕円曲線のランク(rank)です。
ランクrは0,1がよくありますが、
有理数体上でいくらでも大きくなるかもしれないといわれていますが、まだ未解決らしいです。
さて、このページの
1番目のy^2=x^3 +1、 2番目のy^2=x^3-x、3番目のy^2=x^3-432 のランクはみな0です。
そのあとのE:y^2=x^3-x+1、y^2=x^3-4、y^2=x^3-2のランクはみな1です。ということがわかってます。
直和というのは、
ベクトルのように生成元が張る空間を独立に和の形式で表すことができる空間のことです。
つまり線形代数で独立なベクトルの張る空間の結合として空間を考えるときに、結合された空間の次元はもとの空間の次元の和になることから、直和といい⊕記号を使って表します。
しかし、要素数だけを考えるならば、直積と同じになります。
(たとえば、Z2⊕Z2はx={0,1}、y={0,1}で1次元の2空間が張る次元は和で1+1=2次元だけど、要素数は2×2=4個の点になるので、直線と同じですね。)
だから、
Mordell の定理の定理で前半から、ランクrで様子がきまりますね。
r=0の場合前半はZの0乗つまり1倍なので、前半は関係ないので後半で決まります。
r=1の場合はZつまり、無限になりますね。
では、後半部分になりますが、これがまた定理があります。
「Mazur の定理」
です。
位数有限の元全体からなる部分群に いては次の2パターンしかない。
パターン1.Znの巡回群でnは11以外で1から12の整数。
パターン2.Zn⊕Z2で、nは2,4,6,8だから、位数はその2倍で、4,8,12,16のどれか。
というものです。
1番目のy^2=x^3 +1はパターン1のZ6でした。
2番目のy^2=x^3-xはパターン2のZ2⊕Z2でした。
3番目のy^2=x^3-432はパターン1のZ3でした。
Mordell の定理もMazur の定理も証明は相当なページ数になると思われるので省略します。
また、肝心のランクrを求めるカンタンな方法はない。独立な点の線形結合で群の要素をかくときの要素数をrとするというが、
独立な点というのは無限位数の点をさす。
だから、有理点の位数が有限ならば、独立な点はないので、r=0となるということだ。
このランクrの求め方は謎だ。
このランクrの謎は、数学の七大未解決問題(ミレニアム懸賞問題)の1つである
「BSD予想(バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想)」
の中心部分であるという説もあり、かなりの沼地のようなので、このくらいにしておこう。
これで1冊の本ができるくらいアルゴリズムが研究されているようだが、
簡単な方法はなく、探求的、段階的な方法で工夫されている途上にあるようです。
とりあえず、暗中模索の楕円曲線がきれいに分類されるナイフのような切れ味の2大定理を作った
モーデルさん、マズールさんに感謝します。