ジョルダン標準化の手順
係数行列B_tで削った残りが固有空間(箱)の次元だ
1。標準化のための準備
今回は「ジョルダン標準化の手順」です。
その前に、固有空間つまり固有箱について見てみよう。
<固有値ごとに固有箱がある>
変換Aをxにしてもxの定数倍になるとき、
つまり、
Ax=tx
のtを固有値、0でないxを固有ベクトルと言ったのでした。
言い換えると
連立方程式(A-tE)x=Oが非自明解xを持つことでしたね。
この係数行列をA-tE=B_tとすると、
B_tx=0となる解xの空間、箱を
固有箱(固有空間)と言うのです。
全空間をVとしたら、固有箱は固有値tにちなんでV(t)と書きます。
このとき
次元公式から、
dimV(t)=n-rankB_t
ができます。
係数行列Bのランクがnを削った残りが、固有箱の次元dimV(t)になるのですね。
もしも固有方程式の解が2つ以上あれば、それぞれの固有値に対して
固有箱ができるということだね。
たとえば、n=3で、固有値t=1,2,2だとしよう。
t=1ではrankB_1=2だとしたら、dimV(1)=3-2=1。だから、V(1)の固有ベクトルは1つだけ。
t=2ではrankB_1=1だとしたら、dimV(2)=3-1=2。だから、V(2)の固有ベクトルは2つある。
このように、
固有値の重複度とrankBは一致しないので、係数行列B=A-tEを掃き出し法などで丁寧に調べてみないといけないね。
<固有箱の入れ子と広義固有箱>
B_t=A-tEとするとき、B_tx=0の解xの空間が固有箱V(t)だったね。
ここで、
B_t^j x=0の解xの空間を広義固有箱W_j(t)という。
すると、箱の入れ子ができるのです。
V(t)=W_1(t)⊂W_2(t)⊂W_3(t)......。
真部分になると、次元が上昇するためいつか、数体の次元と同じになる。広義固有箱の入れ子の一番小さい箱がふつうの固有箱。
広義固有箱の系列の次元が上がっていくと、
それに対応して、係数行列Bのランクは下がっていくということだ。
<固有値と直和分解>
Aの固有多項式が
φ_A(t)=(t-t_1)^{n_1}(t-t_2)^{n_2}.....(t-t_r)^(n_r)
と因数分解して指数表現にかけるなら、
空間全体は広義固有箱に直和分解できます。
V=W(t_1)⊕W(t_2)⊕.......⊕W(t_r)
Aは適当な正則行列Pで
P^(-1)AP={[A1...],[.A2...]...[...Ar]}
と
r個の小正方行列に直和分解できて、
その小正方行列Aiの固有多項式は(t-t_r)^{n_r}だ。
固有空間(箱)の入れ子の系列で次元が1ずつ上がる
2。標準化の手順と例
標準化の手順
どんな行列Aでも
Pをみつけて、Aと相似な行列D=P^{-1}APを求め、
Dがジョルダン標準形Jになるようにする
「標準化」の手順を見ていこう。
標準化の方法は主に2つあります。
固有方程式を解いて固有値tを求めたあと
どうするか?
・tごとJBの個数と次数からJを求めて、変換行列Pを求める方法。
・tごとの固有箱の入れ子と次元からPを求めてからJを求める方法。
それの合わせ技もOKだ。
<先にJを出してからPを出す手順はこうだ>
(1) Aの固有値t
(2) 係数行列B_t=A-tEn
(3) 係数行列のランクr=rankB_t
(4) tに対するJB(ジョルダンブロック)の個数n-r
(5) tに対するJBの最大次数k(rankB^k=0となる)
(6) 必要があれば、j次のJBの個数を公式で確認する。
(mj=rankB^{j+1}-2rankB^j+rankB^{j-1}を使う。)
(7) 以上から、ジョルダン標準形Jを確定する。
(8) AP=PJつまり、J=P^(-1)APとなる変換行列Pを求める。
A={{4,1,1},{-1,2,-1},{0,0,3}}のとき
geogebraのtexでかくと
(1) 固有方程式φ(x)=|A-tE3|=....=(t-3)^3=0から、
Aの固有値t=3,3,3(対角成分)
(2) B=A-3E3={{1,1,1},{-1,-1,-1},{0,0,0}}
geogebraのtexでかくと
(3) r=rankB=1
(4) JBの個数はn-r=3-1=2個。
(5) B^2=Оとなるから、 rankB^2=0。
だから、JBの最大次数k=2
(6)(4)(5)からJは次数2のJBと次数1のJBで直和分解の形になる。
(7)入れ替えできるけど、とりあえずJB1={{3,1},{0,3}},JB2={{3}}
J=P^(-1)AP={{3,1,0},{0,3,0},{0,0,3}}
geogebraのtexでかくと
(8)変換行列を一次独立なベクトルp1,p2,p3を使ってP={p1,p2,p3}と書くとAP=PJから
Ap1=3p1,Ap2=p1+3p2,Ap3=3p3
B=A-3E3を使って、
Bp1=0,
Bp2=p1,
Bp3=0と3つの方程式ができた。
一般にBx=bが解けるためには,b=t{b1,b2,b3]とおくと、
拡大係数行列[B|b]={{1,1,1,b1},{-1,-1,-1,b2},{0,0,0,b3}}
geogebraのtexでかくと
={{1,1,1,b1},{0,0,0,b1+b2},{0,0,0,b3}} b1+b2=0,b3=0で、
x=t[x1,x2,x3]とすれば、1行目との積x1+x2+x3=b1だから、
Bx=t[b1,b2,b3]の解はx=t[b1-x2-x3,x2,x3]=t[b1-s-t,s,t]とおける。
Bp1=0の特殊解はp1=t[-s-t,s,t]=t[-1,1,0]
Bp2=p1=t[-1,1,0]の特殊解はp2=t[-1-s-t,s,t]=t[-3,1,1]
Bp3=0の特殊解はp3=t[-s-t,s,t]=t[-2,1,1]
これから、1例として
P=(p1,p2,p3)=(t{-1,1,0},t{-3,1,1},t{-2,1,1})
<Pを先に出してからJを後で求める手順>
A={{3,0,0},{-1,2,1},{-1,-1,4}}のとき
φ(x)=|A-tE3|=....=(t-3)^3から、Aの固有値t=3,3,3(対角成分)
B=A-3E3={{0,0,0},{-1,-1,1},{-1,-1,1}}で、B^2=О
係数行列Bのランクは1だから、dimV(3)=3-1=2。
固有箱の入れ子の系列V(3)=⊂W1(3)⊂W2(3)=R^3から、
次元は、dim W1(3)=2,dimW2(3)=3
だから、{{0,0,0},{-1,-1,1},{-1,-1,1}}x=0となるdim W1(3)の
基底ベクトルはp,q2つある。
[p,q]=[{0,1,1},{1,0,1}]
B^2=Oだから、Ox=0となるxはなんでもいいけれど、p,qとは独立なものを追加する。
r={0,0,1}とすると、[p,q,r]で3次元をすべて張れるので、W2(3)つまり、R^3の基底になる。
p=Brから、
たとえば、P=(Br,r,q)
=(t{0,1,1},t{0,0,1},t{1,0,1})
とおくと、
J=P^(-1)AP={{3,1,0},{0,3,0},{0,0,3}}
3.固有値が2つあるときの手順
A={{3,-2,1},{0,3,0},{-1,2,1}}のとき
<*JからPを出してみよう。>
(1) φ(x)=|A-tE3|=....=(t-2)^2(t-3)から、
Aの固有値t=2,2,3(Jの対角成分)
t=2
(2) B1=A-2E3={{1,-2,1},{0,1,0},{-1,2,-1}}
(3) r1=rankB1=2
(4)固有値t=2で対角線に2が2個並ぶ部分で、n-r1=3-2=1個。
このブロックではJB1={{2,1},{0,2}}
t=3
(2)' B2=A-3E3={{0,-2,1},{0,0,0},{-1,2,-2}}
(3)' r2=rankB1=2
(4)固有値t=3で対角線に2が1個並ぶ部分で、n-r2=3-2=1個。
(5)(6)(7)
ここまでの情報をまとめると、
JB1={{2,1},{0,2}},JB2={{3}}
J=P^(-1)AP={{2,1,0},{0,2,0},{0,0,3}}
(8)変換行列を一次独立なベクトルp1,p2,p3を使ってP=t{p1,p2,p3}と書くとAP=PJから
Ap1=2p1,Ap2=p1+2p2,Ap3=3p3
B1=A-2E3,B2=A-3E3を使って、
B1p1=0,B1p2=p1+2p2,B2p3=0と3つの方程式ができた。
一般にBx=bが解けるためには,b=t{b1,b2,b3]とおくと、
拡大係数行列[B|b]={{0,0,0,b1},{-1,-1,1,b2},{-1-1,1,b3}}
={{0,0,0,b1},{-1,-1,1,b2},{0,0,0,b2-b3}} b2=b3,b1=0で、
x=t[x1,x2,x3]とすれば、2行目との積から-x1-x2+x3=b2=b3だから、
Bx=t[b1,b2,b3]の解はx=t[x1,x2,x1+x2+b2]=t[s,t,s+t+b2]とおける。
Bp1=0の特殊解はp1=t[s,t,s+t]=t[0,1,1]
Bp2=p1=t[0,1,1]の特殊解はp1=t[s,t,s+t+1]=t[0,0,1]
Bp3=0の特殊解はp1=t[s,t,s+t]=t[1,0,1]
これから、1例として
P=(p1,p2,p3)={t{0,1,1},t{0,0,1},t{1,0,1}}
<*Aが同じとき、PからJを出すこともできるはず。>
Aの固有値t=2,2,3(Jの対角成分)
t=2に対して
W1(2)⊂W2(2)=W(2), dimW1(2)=1,dimW2(2)=2
B1=A-2E3={{1,-2,1},{0,1,0},{-1,2,-1}}に対して、
B1x=0の解はたとえば、p={1,0,-1}
B1^2={{0,-2,0},{0,1,0},{0,-2,0}}
に対して、
B1^2x=0の解はpの他に、たとえば、q={0,0,1}
t=3に対して
W1(3)=W(3),dimW1(3)=1
B2=A-3E3={{0,-2,1},{0,0,0},{-1,2,-2}}に対して、
B2x=0の解はたとえば、r={-2,1,2}としよう。
B1q=pだから、たとえば、
変換行列P=(B1q,q,r)=(t{1,0,-1},t{0,0,1},t{-2,1,2})
とすると、
J=P^{-1}AP={{2,1,0},{0,2,0},{0,0,3}}