リーマン予想のゴールを探れ
このワークシートはMath by Codeの一部です。
ゼータ関数がオイラー積に直せることで、
級数という「たし算」と素数を使った「かけ算」をつなぐことができることが、
オイラーのおかげでわかった。
ゼータ関数の探求のきっかけは、「調和級数の発散」、「バーゼル問題」だった。
オイラーが生きた、のどかで自由奔放な近代の代数的な関数観の時代が終わり、
リーマンの現代数学につながる解析的な関数の時代になると、
ゼータ関数が再定義されることになったね。
それが、リーマン・ゼータ関数だ。
平たく言えば、ゼータ関数の変数を実数から複素数に解析接続したのだった。
でもことはそれだけではすまなかった。
そもそも、リーマンは「素数定理」を証明するために、
ゼータ関数を利用して、「リーマン予想」を証明の道具にしたかったようなのだ。
しかし、皮肉なことに、「素数定理」は別にリーマン予想が証明できなくても成立することが後にわかり、
道具だったはずの「リーマン予想が未解決のまま」残っている。
今回は、リーマン予想の動機、その内容、近似について具体的に見ていこう。
ただ、級数の処理が天下りになるところがいくつかあります。
興味のある人は導き方の行間を自分でうめてください。
1.リーマン・ゼータ関数のオーバービュー
<ざーっと見渡す、オーバービュー>
リーマンが 1859年にかいた「与えられた数より小さい素数の個数について」
の中での主張は、次の7つ。
そのうち6番だけが証明されていないということだ。
順にポイントをイメージしてみよう。
ゼータ関数ζ (s) = Σn^(-s)=Π(1-p(-s))^(-1)( s=σ+it, sは複素数、pは全素数、Σは無限級数)
これは、式の上では実数のときとかわらない。
(1) 「唯一の火山は点s=1だけだ」
ζ(s)はs =1 以外の全平面で正則。s=1は1位の極でその留数は1。
つまり、(s-1) ζ (s) とζ(s)-1/(s-1)はともに整関数(全域で正則)
(2) 「関数等式による対称性、Re(s)=1/2で線対称な世界」
sと1-sの入れ替えでAは不変である。A=Γ(s/2) π^(-s/2) ζ(s)
ゼータ関数はガンマ関数とつながっている。
(3) 「零点(=0の解となる点s)の存在ゾーン」
零点には(2)からガンマ関数ゆずりの負の偶数-2nのように自明なものがあるけれど、
独自の零点がσ=Re(s)は0と1の間に無数にあり、σ=1/2に対し対称。
(4) 「零点の絶対値の逆数の和は発散する」
ζ(s)の虚の零点をρ=β+iγとすると、Σ1/|ρ|=∞
(5)「 正則化した式の積分解は零点の理由につながる」
(s-1) ζ (s)=Ae^BsΠ(1-s/ρ)e^(s/ρ)と分解できる。
(6) 「今でも定理になれないリーマン予想H.S.」Rieman Hypothesis
ζ(s)のσ=Re(s)は0と1の間の零点はすべてσ=1/2の上だけにある。
(7) 「素数定理」(リーマンの意図したゴール)
(7)素数定理は後の数学者により、より精緻化されていくのですが、(6)のリーマン予想はいろいろな言い換えや関連づけ、数値計算など、数学者だけでなく物理学者も巻き込み研究が進んでいますが、まだ、証明はできていません。オーバービューはここまで。
2.リーマン・ゼータ関数の極と零点
リーマン・ゼータ関数の極と零点
<火山をさけて接続する>
sが実数の場合を思いだそう。
ゼータ関数ζ(s)はs=1のとき、つまり調和級数は発散しましたね。
1に限らず、sが1以下なら発散します。
ゼータ関数ζ(s)を解析接続しよう。
右半領域で、整数nの恒等式1/n^s=1/Γ(s) ∫e^(-nt)t^(s-1)dtから
Re(s)が1より大きい領域で無限和をとると、
ζ(s)=1/Γ(s)∫t^(s-1)/(e^t-1)dtとなる。
しかし、このままではt=0のときに爆発します。
その爆発をさけるために、実数の綱渡りから、複素平面に次元を上げよう。
任意の点sでの積分J(s)=∫_C(-z)^(s-1)/(e^z-1)dzを考えます。
Cは実軸の右半分をεだけ虚軸方向に上下に平行移動した2半直線を
原点中心で半径εの左半平面の半円周をつなぎ、+∞から+∞へと進むUターン経路、
ハンケル経路で積分することで、J(s)は整関数となる。
ε→0として、Re(s)が1より大きいときJ(s)=-2i sin(πs)Γ(s)ζ(s)となるため、
ζ(s)=-1/2πi Γ(1-s)J(s)となる。
これでJ(s)は正則で、Γ(1-s)がs=1で爆発するだけに、ζ(s)は点s=1以外で解析接続されました。
Cを連続変形して半径εの円にすれば、J(1)=2πi。
s→1のとき、(s-1)ζ(s)→1となるので、s=1はζ(s)の1位の極で、留数は1。
<零点について調べる>
ζ(s)はオイラー積表示できる。
一方でΠ(1-1/p^s)はRe(s)が1より大きい領域で絶対収束して正則する。
だから、Re(s)が1より大きい領域ではζ(s)=Π(1-1/p^s)^-1がゼロになることはありません。
1.Re(s)が1より大きいと零点はない。
2.自明な零点は負の実軸に横並び。
関数等式
2^(s-1)Γ(s) ζ(s) cos(sπ/2) =π^s ζ(1-s)
を書き換えると、
ζ(s) =2^(s-1)π^s/{Γ(s)cos(sπ/2) }ζ(1-s)
となる。この分母をη(s)とおくと、
η(s)=Γ(s)cos(sπ/2)
はRe(s)が負の領域で有理型で1位の極s=-2n(nは整数)に限る。
だから、この逆数1/η(s)は零点になる。
ということは、ζ(s) の左半平面の零点は-2nで、その位数は1で、これを自明な零点という。。
3.非自明な零点はRe(s)=1/2でたて並び。
だから、非自明な零点は実部が0以上1以下のゾーンにある。
非自明な零点は、たぶん関数等式の線対称に着目して、
Re(s)=1/2にあるという予想をリーマンは立てた。
課題:η(s)の1位の極が逆転して零点になることを感じよう。
1/∞=0というのが、関数でもいえるね。
タイトル「1位の極の逆数は零点」
f(x)=gamma(x)
a(x)=cos(x pi/2)
l1=sequence((-2k,0),k,0,10)
b(x)=f(x)a(x)
h(x)=1/b(x)
分母の
b(x) = f(x) * a(x)を観察してみよう。
ガンマ関数f(x)「負の整数( 0, -1, -2, -3 … )の爆発」
サイン関数a(x) 「負の奇数でのゼロ」が激しく干渉し合います
その結果、
負の奇数の場所では∞×0の効果で、ゼロにならなくても爆発はやみます。
負の偶数の場所では∞×±1の効果で、爆発は温存されてしまいます。
それを、ひっくり返すと、
負の偶数の場所では1/∞=0となり、零点がきれいにならびます。
それがl1の点(負の偶数点)とピタッとあうのが心地よいですね。1位の極の逆数が零点
3.リーマン予想の数値計算
たて並びの零点を数値計算してみよう。
<クサイ関数で単純化>
ξ(s)=π^(-s/2)Γ(s/2)s(s-1)/2 ζ(s)
とおくと、関数等式
π^(-s/2)Γ(s/2)ζ(s)=π^((s-1)/2)Γ((1-s)/2)ζ(1-s)
を
ξ(s)=ξ(1-s)
と単純にかける。
Re(s)=1/2のゼータζ(s)の零点1/2+itのtを求めるには、
Re(s)=1/2のクサイξ(s)の零点1/2+itのtを求めればよく、
鏡像原理より、実軸について対称な点は共役な値になるから、
ξ(1/2+it)=conjugate(ξ(1/2-it))
となるので、t>0の範囲で求めれば対称点もわかる。
<ハーディーのZ関数>
u=1/4+it/2とおき、
A(t)=π^(-1/4)e^Re(logΓ(u) *(t^2+1/4)/(-2)<0いつも負。
θ(t)=Im(log Γ(u))-1/2 tlogπ
Z(t)=e^(iθ(t)) ζ(1/2+it)
と3つのtの関数にまとると、
ξ(1/2+it)=A(t)Z(t)からZ(t)の符号はA(t)と逆。
だから、Z(t)の符号変化から、Z(a)=0となるZの零点aを探せる。
次のような公式群によって、Z(t)、θ(t)を近似計算するときに使える。
<オイラー・マクローリンの和公式>
オイラーの和公式
ΣM N f(n)
=∫MNf(x)dx
+(f(M)+f(N))/2
+ΣB2j/(2j)![f(2j-1)(x)]MN
+誤差項∫MN(x-[x]-1/2)f'(x)dx
誤差項はさらに細分できる。
関数z/(e^z-1)をマクローリン展開した係数が
ベルヌーイ数Bn(B0=1,B1=-1/2,B2=1/6,B4=-1/30,B6=1/42,
B8=-1/30、B10=5/66,B12=-691/2730,....)で、
ベルヌーイ多項式Bn(x)=B0x^n+(nC1)B1x^(n-1)+...+(nCn-1)Bn-1x+Bn
、Bn(0)=Bn(1)=Bnや微分の関係式 Bn'(x)=n Bn-1(x)がある。
これらから誤差項は、
∫_M^N(x-[x]-1/2)f'(x)dx
=[B2/2 f'(x)]_M^N- 1/2 ∫_M^N B2(x)(x-[x])f''(x)dx
誤差項をこのように細分化したものが
オイラー・マクローリンの和公式
たとえば、
N=∞、M=6,k=1でζ(2)をオイラー・マクローリンの和公式で近似してみよう。
ζ(2)=1+1/2^2+...+1/5^2+Σ1/n^2
=1+1/2^2+...+1/5^2
+∫_6^∞1/x^2 dx L
+(1/6^2)/2
+B2/2![-2/x^3]_6^∞+R2
=1.6449382+R2
オイラーの公式ζ(2m)=(2π)^2m(-1)^(m+1) B2m/(2(2m)!から
ζ(2)=π^2/6
=1.644934...
よい近似になっているね。
<ゼータ関数にもオイラー・マクローリンの和公式を>
近似がすばらしいので、オイラー・マクローリンの和公式を
ゼータ関数にも使おう。
ζ(s)=Σn=1M-1 1/ns
+M(1-s)/(s-1)
+1/2×M(-s)
+Σj=1k B2j/(2j)!×M(1-s-2j)Πl=0 2k-2(s+l)
+R2k
M=6,k=2,s=1/2+tiとして、
ζ(s)=Σn=15 1/ns
+6(1-s)/(s-1)
+1/2×6(-s)
+B2/2!×6(-s-1)×s
+B4/4!×6(-s-3)×s(s+1)(s+2)
+R4
B2=1/6
B4=-1/30。
せっかく文明の利器があるので、geogebraでシミュレーションしてみよう。
課題:リーマン予想の虚部tをgeogebraで見える化するにはどうしたらよいでしょうか。
タイトル「リーマン予想:ζ(1/2+ti)がゴール0+0iに入るztを見逃すな」
t=slider(0,50,0.001)
s=1/2+t i
u=1-s
v=s+1
w=s+2
b=s+3
A=Sum(1/n^s,n,1,5)
p=6^(u)/-u
q=1/2*6^(-s)
r=1/6/2*6^(-v)*s
c=-1/(30*24)*6^(-b) s*v*w
zt=A+p+q+r+c
tのアニメーションをスピード0.1で動きを増加にする。
goal=0+0i
a=if(abs(real(zt))<0.1 ∧ abs(imaginary(zt))<0.1, t,0)
text1=""+a+""
text1を太字の大きな文字にしよう。点ztはふらふら動くけれども、
t=14,
t=21
t=25
t=30
t=33
t=37
のあたりで、
デカデカとtの値が表示されるでしょう。